・圏域内の障害分野の事業所の連携強化とバックアップを強化する取り組みを行うことで、大津市の障害分野の事業所の質の向上と連携強化を図り、障害のある方が地域で安心して自分らしく暮らし続けるための支援を受けられる大津の構築を目指す。
①サービス管理責任者大津圏域研修
・大津市内の障害福祉事業所の連携と質の向上を目指して、サービス管理責任者現任研修を福祉指導監査課の集団指導と併せて2016年度から2018年度にかけて、毎年1回独自に開催してきた。市内のサービス管理責任者を配置している事業所が集まり、意思決定支援や連携や人材育成に関して議論をしてきた。国のサービス管理責任者の研修体系の見直しで実践研修が立ち上がったのでいったん終了としていたが、市内の事業所の質の向上のための連携強化のために研修会を年1回開催する。
②サービス評価のツール提供
・平成30年度から障害福祉サービス等の情報公開制度が創設されるのにあたり、大津圏域でも全ての障害福祉のサービス事業に関して、大津市のスタンダードとなる基準と要件を作成して、自己評価、利用者評価、第3者評価を行い、事業所の質的向上及び市民が福祉サービスを選ぶ判断材料となる物を作るべくスタンダードプロジェクトを立ち上げて議論してツールを開発した。市内の事業所でサービス評価を希望する事業所に対してツールを提供して、自己評価と利用者評価を実施していただく。
③事業所へのフォローアップ
・既存事業所(社会福祉法人を中心に)が新規参入の事業所のバックアップを行う。
・新規事業の立ち上げの際の実習や情報提供の協力
・新規事業所がケース対応や運営で困った時にどこがフォローしてくれるかの案内
④事業所間職員交流
①スタンダード策定の趣旨
2006年の規制緩和により、障害福祉サービスの領域に様々な法人や団体が事業者として新規参入が始まりました。当初は市場原理に基づく競争を旧来の社会福祉法人のみの世界に持ち込んだことにより、経営やサービス・質の向上を期待されました。しかし、10年を超えた今、残念ながら福祉の性善説を覆すような事件やあり方、営利に偏った経営など、本来の目的と違う運営が新聞や報道でなされ国民の批判を浴びることとなっています。
幸いにも大津市内では、まだそのような事件には至っていませんが、「今後の予防」と「より質の高い福祉サービスを市民に提供」するため、国の規定以外にも業界としての基準が必要ではないかという声が出始めています。全国では、「悪しきA型」の報道として利用者をないがしろにした営利中心の事業所への批判に、危機感をつのらせた障害者の就労を支援する企業や福祉施設、NPO法人等が就労継続支援A型事業所全国協議会(全Aネット)として全国組織を結成し、厚生労働省の応援を受け、既にスタンダード(基準)作りのプロジェクトを開始・検討を始めています。
また、障害のある子どもを放課後や長期休暇中の支援を行う「放課後等デイサービス」においても、利用実態がないのに報酬を受け取ったり、必要な職員を配置していなかったりする不正や適切な支援が行えていないといった指摘もされています。
そのような中で、大津市においての障害福祉サービス事業所の独自の基準と要件を作成し、事業所自身が自己点検やより質の高い福祉サービス事業者になるための指針として、評価を受けることが必要ではないかとおおつ「障害者の生活と労働」協議会(以下O.S.K.)の中に2015年に『スタンダードプロジェクト』というプロジェクトチームを作り検討をはじめました。
この議論の中で障害福祉サービスの基準を創り、公表することは、障害福祉サービス事業所の質的向上や利用者の社会生活の向上につながるだけではなく、市民が福祉サービスを選ぶための判断材料となり、また市行政が単独補助を支給するための目安ともなるなどの利点があるのではないかとされました。
②議論の経過
この基準の評価には「自己評価」「利用者評価」「第3者評価」が必要であろうと思われ、昨年度より、その検討・実施は大津市障害者自立支援協議会の中でなされる方がより適切であろうと思われ、発展的移行することとなりました。
趣旨に基づいて、入所系・通所系・訪問系・就労系などすべての障害福祉サービスや障害福祉補助事業に対して評価をすべきと考え、「安心で良い障害福祉サービス並びに障害者の就労支援を実施することのできる大津」を実現するためには、法定内・外を問わず全ての障害福祉事業等全般とした評価基準を作成することが必要だと思われます。しかし、すべての福祉サービス等のスタンダードを同時に作成するのは難しく、報道等で問題が指摘され、厚労省からも通知が出されている就労継続支援A型事業所を含めた就労系事業所から着手することといたしました。
自立支援協議会の中での議論は、ベテランのスタッフによるスタンドードプロジェクトチームと中堅若手による作業部会とを設けてそのあり方の検討を進めています。
プロジェクトチームでは、スタンダードプロジェクトの理念の策定に向けての議論を進め、作業部会では、評価の手法について既存の評価表等の活用を積極的に行い、必要な項目を追加していくことなど、具体的な取り組みの進め方などを議論しています。また、事業所の職員の育成・研修のあり方などの検討もあわせて行っていくことが重要との確認もなされています。
障害福祉サービスに携わり、働く全ての者は、下記の事を念頭に置き、
共生社会の実現に向け、共に歩むことをもって障害福祉サービスに携わることを旨とする。
1、 障害者差別のある社会及びそこに生きる己自身をも含めた現状を認知すること。
2、 障害のある人も、ない人と同様に、尊重されるべき命を持っていること。
3、 障害のある人も、ない人と同様に、人間としての価値を有していること。
4、 障害のある人も、ない人と同様に、地域社会で生きる当たり前の人間であること。
5、 障害のある人も、ない人と同様に、対等な人間であることを絶えず振り返ること。
障害者作業所(現事業所)は、今から4~50年前に様々な思いを形にすることで作られてきました。自らの子供たちの行き場(収容施設ではない)として、当事者が地域で活動する拠点として、また地域共生の街づくりを目指し共に働く場として…。
しかし、それらの場のどれもが、作業所を運営することを「事業」として捉え、いわゆる儲け口として開始したところはありませんでした。規模の大きな収容施設さえも、一部の篤志家による「この子らに世の光を」という発想のもとに続けられてきたという経緯があります。「障害者の面倒を見る」ということ自体が富を生み出すものだ、という価値観は市井にも公にも営利にもなかったのです。
とりわけ、止むに止まれず開始した冒頭のような取り組みは小規模作業所という形で開始され、公的な支援はなく手弁当で運動として展開されてきました。運動、すなわち社会を小なりといえども変革していこうという気概はあったと思います。ただ、運動を継続していくためにも経済力は必要でした。「共に働く」場は、自らの事業で金を得ようとしますが、生産性の低さから一般社会から排除されてきた障害者をたくさん集める「事業所」が成り立たないのは火を見るよりも明らかでした。それは、他の立場で作業所を開始したケースでも同様でした。
そのため、ニーズや立場の違いを超えたところで、公的支援の要求がまとまっていくのも必然でした。「完全参加と平等」を謳った「国連障害者の10年」などの国際的な機運も相まって、地方自治体が作業所運動に注目をするのもまた、時代の必然でした。ただ、それらは東京などを中心とした都市圏と九州や東北などの周辺部では補助金額に大きな格差があったことも事実です。そこで、障害者団体や作業所団体による全国平準化、高水準化を求める議論が起こります。それが、障害者自立支援法やその後の総合支援法へとつながっていきます。
現在、小規模作業所時代に比べると給付費(補助金)は格段のアップとなりました。同時に、社会福祉事業を運営する法人格にも規制緩和の流れに沿って自由化が行われ、法人格さえあればだれでも参入できる仕組みが出来上がったのです。このことにより、自立支援法施行当時、全国10000か所と言われた事業所数は20000か所になんなんとしています。これに放課後等デイを入れると、箇所数の増加を見るまでもなく予算がうなぎ上りになる一因とも考えられています。そこには、営利が参入をしても「総合支援法では「儲かる」確信があるため、多くのサービス事業者が営利の名のもと参入してきました。営利の参入は、事業所数を増やし選択の幅を広げるという成果はあげましたが、企業の営利追求に終始し地域共生につながらない莫大な予算出動が増える一方です。
そこで、国は運営基準の見直しや総量規制を始めますが、すでに増大する予算はあふれ出し、作業所が始まった初期の理念や願いにより抑制や育成をするのではなく、「削減ありき」の議論が独り歩きしています。儲ける側も、その資格主義や配置基準に合うように事業所の態様を変化させ、生き残りをかけます。果たして、そのような形で残る事業所が障害当事者の地域で働き暮らすことに資するものとなるのか?地域共生社会の機動力となるのかを問えば、残念ながらNOと答えるしかあれません。
大津圏域において共生社会の大津を実現させるため、当たり前のように障害者が地域で働き暮らすために社会資源としてもうすこしの間、障害者事業所の活躍は必要です。税金の無駄遣いになる営利のための事業展開には引いていただき、より素敵な大津を実現する原動力となる事業所こそを育成するために「大津ならではのスタンダード」が今こそ必要です。